2012-03-18

コックス「ガロワ理論」 14.3節の演習問題3


演習問題13
(a)
X={1,...,n}の異なる元からなる任意の2つの順序付きn(i1,...,in), (j1,...,jn)について、
jk=σ(ik)となる写像σ:XXは明らかに11で全射だから、
対称群の定義によりσSn
(i1,...,in), (j1,...,jn)は任意だから、順序付きn対全体の集合Pn上で、
Snは可移に作用するので、Snn重可移

(b)
n3とし、X={1,...,n}の異なる元からなる任意の2つの順序付き(n-2)
(i1,...,in-2), (j1,...,jn-2)について、{i1,...,in-2}={j1,...,jn-2}だったとする。
このとき、(a)によりSnn重可移だから(n-2)重可移なので、
σ·(i1,...,in-2)=(j1,...,jn-2)となるσSnが存在する。
{i1,...,in-2}に含まれないX2元をx1,x2として、
σ(x1 x2)·(i1,...,in-2)=(j1,...,jn-2)となり、(x1 x2)は互換だから、
sgn(σ(x1 x2))=-sgn(σ)となり、σσ(x1 x2)のどちらかはAnに入る。
したがって、{i1,...,in-2}={j1,...,jn-2}ならば、
τ·(i1,...,in-2)=(j1,...,jn-2)となるτAnが存在する。

{i1,...,in-2}{j1,...,jn-2}で、{j1,...,jn-2}に入らない{i1,...,in-2}の元が1つの場合、
それぞれ唯一つのik{j1,...,jn-2}jl{i1,...,in-2}をとり、
(j1,..., jl -1, jl, jl +1,...,jn-2)の代わりに(j1,..., jl -1,ik, jl +1,...,jn-2)を用いた、
σ·(i1,...,ik,...,in-2)=(j1,..., jl -1,ik, jl +1,...,jn-2)となるσAnが存在する。
すると(ik jl)σ(ik jl)-1·(i1,...,ik,...,in-2)= j1,..., jl -1, jl, jl +1,...,jn-2)で、
(ik jl)σ(ik jl)-1Anとなる。
{j1,...,jn-2}に入らない{i1,...,in-2}の元が2つの場合には、
1つの場合の(ik jl)に当たる互換2つによって、
1つの場合と同様にすればよい。
よって、σ·(i1,...,in-2)=(j1,...,jn-2)となるσAnが、
任意の(i1,...,in-2),(j1,...,jn-2)について存在するのでAn(n-2)重可移。

(n-1)(i1,...,in-1), (j1,...,jn-1)については、
(n-2)対の場合の(x1 x2)が存在しないので、
σ·(i1,...,in-2)=(j1,...,jn-2)となるσSnが偶置換とは限らない。
実際、例えば(i1,...,in-2,in-1)(i1,...,in-1,in-2)に写す置換は、
(in-1 in-2)Anのみだから、An(n-1)重可移ではない。

演習問題14
(a)
2×2行列には4つの成分があるので、成分の選択はq4通りあるが、
そのうちGL(2,Fq)の元になるのは行列式が0でない行列である。

2×2行列の行列式が0になるのは、
(i)1行目がすべて0となるq2通りの行列
(ii)1行目の一つの成分が0、もうひとつの成分が0ではなく、
2行目が第1行目のスカラー倍(このスカラーはFqの元)となる2(q-1)q通りの行列
(iii) 1行目の成分はすべて0でなく、
2行目が第1行目のスカラー倍となる(q-1)2q通りの行列
のいずれかだから、|GL(2,Fq)|=q4-[q2+2(q-1)q+(q-1)2q]=q(q-1)(q2-1)

(b)
任意のAGL(2,Fq)SSL(2,Fq)についてdet(ASA-1)=1だから、
ASA-1SL(2,Fq)なのでSL(2,Fq)GL(2,Fq)
(1/det(A))I2ASL(2,Fq)だからAdet(A)I2SL(2,Fq)det(A)Fq*なので、
GL(2,Fq)/SL(2,Fq)Fq*I2となるから、|GL(2,Fq)/SL(2,Fq)|=q-1
よって(a)により|SL(2,Fq)|=|GL(2,Fq)|/(q-1)=q(q2-1)

PGL(2,Fq)=GL(2,Fq)/Fq*I2だから、|PGL(2,Fq)|= |GL(2,Fq)|/(q-1)=q(q2-1)=|SL(2,Fq)|

(c)
定義によりPSL(2,Fq)SL(2,Fq)の、
aI2 (aFq*)からなるSL(2,Fq)の正規部分群Nによる商群SL(2,Fq)/N
NSL(2,Fq)よりdet(aI2)=a2=1だから、a=±1なのでN={±I2}
故にFqの標数が2(すなわち命題11.1.1によりq=2n (n))ならN={I2}だから、
|PSL(2,Fq)|=|SL(2,Fq)|=q(q2-1)
またFqの標数が奇素数ならN={±I2}だから、
|PSL(2,Fq)|=|SL(2,Fq)|/2=q(q2-1)/2である。

(d)
(c)により、
|PSL(2,F2)|=6,
|PSL(2,F3)|=12,
|PSL(2,F5)|=60,
|PSL(2,F7)|=168

(e)
GL(3,F2)v=(1,0,0)(F23)*への線形変換による作用を考える。
GL(3,F2)は正則な線形変換からなるので、任意のw(F23)*について、
あるAGL(3,F2)が存在してA·v=Av=wとなるから、
|GL(3,F2)·v|=|(F23)*|=|F23{0}|=23-1=7

GL(3,F2)におけるvの固定部分群GL(3,F2)vの元をB=(bij)とすると、
Bv=v, v=(1,0,0)よりb11=1, b21=0, b31=0bijに対するB(i,j)余因子をΔijとすれば、
F2で考えているのでdet(B)=b11Δ11+ b21Δ21+b31Δ31=Δ11
BGL(3,F2)なのでΔ11=|(b22, b23),(b32, b33)|0だから、
((b22, b23),(b32, b33))の選択の仕方は、GL(2,F2)の位数と同数となるので、
(d)により((b22, b23),(b32, b33))の選択は6通り。
そしてそのそれぞれについてb12, b13の選択が22=4通りあるから、
|GL(3,F2)v|=6·4=24である。

したがって定理A.4.9(群の作用の基本定理)により、
|GL(3,F2)|=|GL(3,F2)·v||GL(3,F2)v|=7·24=168
さらに13.3節演習問題9によりGL(3,F2)PGL(3,F2)だから、
|PGL(3,F2)|=|GL(3,F2)|=168

演習問題15
GL(2,F2)については、13.3節演習問題9と同様に、
任意のAGL(2,F2)は正則だからdet(A)F20でないので、
det(A)=1の可能性しかない。故にGL(2,F2)=SL(2,F2)
さらに演習問題14(c)の標数2の場合により、
PSL(2,F2)=SL(2,F2)/{I2}SL(2,F2)

Fp2の原点を通る直線は、(x,y)Fp2として、
x≡0 (mod p), y≡0 (mod p)と、x,y,a(Fp)*としてaxy (mod p)である。
x(Fp)*なのでgcd(x,p)=1だから、任意のx,y(Fp)*に対し、
a(Fp)*が(必ずしも唯一つではないが)定まるので、
上のp+1個の直線でFp2の原点を通る直線は尽くされている。
したがって、Fp2の原点を通る直線はp+1個ある。

PSL(2,F2)GL(2,F2)で、
演習問題14(d)により|PSL(2,F2)|=|GL(2,F2)|=6=|S3|である。
F22において原点を通る直線は2+1=3個あり、
(F2)*のすべての元v1=(1,0), v2=(1,1), v3=(0,1)をそれぞれ通るから、
GL(2,F2)の元によるF22上の線形変換はすべて、v1,v2,v3の置換を生じさせる。
故に群準同型φ2: GL(2,F2)S3が存在する。
Ker(φ2)はすべての1k≤3に対し(aij)vk=vkとなる(aij)GL(2,F2)だから、
k=1に対しa11=1かつa21=0
k=2に対しa11+a12=1かつ a21+a22=1
k=3に対しa12=0かつa22=1なので、このような(aij)I2のみだからφ211
故に同型だから、GL(2,F2)S3となり、したがってPSL(2,F2)S3

次に演習問題14(d)により|PSL(2,F3)|=12=|A4|である。
F32において原点を通る直線は3+1=4個あり、
(F3)*の元のうち同じ直線上にあるものを類別すると、
l1={(1,0),(2,0)=-(1,0)}, l2={(2,1),(1,2)=-(2,1)},
l3={(1,1),(2,2)=-(1,1)}, l4={(0,1),(0,2)=-(0,1)}
PSL(2,F3)の作用により、l1,l2,l3,l4が置換されるから、
群準同型φ3: PSL(2,F3)S4が存在する。
演習問題14(b)によりPSL(2,F3)=SL(2,F3)/{±I2}だから、
k=±1, v1=(1,0), v2=(2,1), v3=(1,1), v4=(0,1)として、
Ker(φ3)はすべての1m≤4に対し(aij)vm=kvmとなる(aij)SL(2,F2)の、
I2}との積についての同値類である。
(aij)vm=kvmの具体的表式を整理すると、
a11=a22, a12=0, a21=0を得、|aij|=a11a22=1からa11=a22=±1
故にKer(φ3)=I2}となり、PSL(2,F3)の単位元だけとなるからφ311
したがって、PSL(2,F3)Im(φ3)となり、Im(φ3)S4の位数12の部分群である。
このような群はA4のみだから、PSL(2,F3)A4

演習問題16
Hが唯一つのGの極小正規部分群からなるなら、
命題14.3.10によりある単純群Aとあるnが存在して、
HAnだから、Hは有限単純群の直積と同型。

Hが異なる複数のGの極小正規部分群N1,..., Nkからなるとすると、
H=N1N2...Nkなので、命題14.3.10により、
ある単純群A1,..., Akとあるn1,..., nkが存在して、NiAini

任意の2つの異なるNi, Njについて、
もしNiNj≠{e}なら NiNjGだから、
NiまたはNjの自明でない部分群NiNjGの正規部分群となり、
Ni, Njの極小性に反する。故にNiNj={e}
したがって演習問題7(c)を繰り返し適用して、
H=N1N2...NkN1×...×NkA1n1×...×Aknkだから、Hは有限単純群の直積と同型。

演習問題17
演習問題2(d)によりAGL(n,Fp)FpnGL(n,Fp)だから|AGL(n,Fp)|=pn|GL(n,Fp)|
v=(1,0,...,0)Fpn{0}への、線形変換によるGL(n,Fp)の作用を考える。
vの固定部分群をGL(n,Fp)vとして、定理A.4.9(群の作用の基本定理)により、
|GL(n,Fp)|=|GL(n,Fp)·v||GL(n,Fp)v|で、
演習問題4(c)により、GL(n,Fp)Fpn{0}上可移に作用するから、
|GL(n,Fp)·v|=|Fpn{0}|=pn-1

n≥2について|GL(n,Fp)v|=1kn-1 (pn-pk)を数学的帰納法により証明する。
n=2のとき、演習問題14(a)により|GL(2,Fp)|=p(p-1)(p2-1)で、
|GL(n,Fp)·v|=p2-1だから、
|GL(n,Fp)v|=|GL(2,Fp)|/|GL(n,Fp)·v|=p2-pなので成り立つ。
n=m-1の時成り立つと仮定して、n=mのときを考える。
A=(aij)GL(m,Fp)vとすると、Av=(a11, a21,...,am1)=vだから、
a11=1, a21=...=am1=0なので、A(i,j)余因子をΔijとすれば、
det(A)=a11Δ11=Δ11≠0
したがってA11=((a22,..., a2m),...,(am2,..., amm))GL(m-1,Fp)で、
A11の可能な選択の数は帰納法の仮定により、
|GL(m-1,Fp)|=(pm-1-1)1km-2 (pm-1-pk)
A11に対しa12,..., a1mの選択がpm-1通りあるから、
|GL(m,Fp)v|=pm-1|GL(m-1,Fp)|=pm-1(pm-1-1)1km-2 (pm-1-pk)
=(pm-p)1km-2 p(pm-1-pk)=(pm-p)1km-2 (pm-pk+1)
=(pm-p)2lm-1 (pm-pl)=1lm-1 (pm-pl)となりn=mでも成り立つ。

したがって、n≥2について|GL(n,Fp)v|=1kn-1 (pn-pk)だから、
|AGL(n,Fp)|=pn(pn-1)1kn-1 (pn-pk)となり(14.18)を得る。

演習問題18
(a)
ABのどちらかがAbel単純群なら、素数位数の巡回群だが・・・
う~ん・・・

(b)
{1,...,r}から任意に1~r-1個の元{i1,...,ik}(1kr-1)をとり、
ajAj (1jr)としてπ((a1,...,ak))=(ai1,..., aik)によって、
写像π:A1×...×ArAi1×...×Aikを定義すれば明らかにπは全射準同型で、
Ker(π)A1×...×ArA1,...,Arから Ai1,...,Aik を除いた群の直積。
A1,...,Arは非Abel群なので、演習問題5を繰り返し適用することで、
自明でない正規部分群は全てこの形である。

演習問題19
(a)
Gは可移なので任意のj{1,...,n}について、
h(i)=jとなるhGが存在する。

Gi{1,...,n}{i}上可移とする。
k,l{1,...,n}を任意のkiかつljなる文字として、
liのとき、すなわちk,l{1,...,n}{i}ならば、
g1(k)=h-1(l)iとなるg1Giが存在するので、
σ=hg1Gをとればσ(i)=jかつσ(k)=lとなる。
l=iのときはljよりijで、h-1(i)iだから、
g2(k)=h-1(i)となるg2Giが存在するので、
σ=hg2Gをとればσ(i)=jかつσ(k)=iとなる。
したがって、任意のkiかつljなるi,j,k,l{1,...,n}について、
σ(i)=jかつσ(k)=lとなるσGが存在するので、G2重可移。

逆にG2重可移なら、任意のj,k{1,...,n}{i}について、
jiかつkiだから、σ(j)=kかつσ(i)=iとなるσGが存在する。
したがってσGiだからGi{1,...,n}{i}上可移。

(b)
Gは可移なので任意の相異なるj1,...,jk{1,...,n}について、
hm(i)=jm (1mk)なるhmGが存在する。

Gi{1,...,n}{i}(k-1)重可移とすると、
{1,...,n}の相異なる元からなる順序付き(k-1)対全体の集合
Pk-1={(j1,...,jk-1)| j1,...,jk-1{1,...,n}{i}}について、Giは可移に作用する。

2つの順序付きk(i1,...,ik), (j1,...,jk)について考える。
(i) ある一つの1mkなるmについてim=iで、j1,...,jkiを含まない場合:
hm(i)=jmなるhmGlm (1lk)について、ili, jl=hm(il)i だから、
σ1·(i1,...,im-1,im+1,...,ik)=(hm-1(j1),..., hm-1(jm-1),hm-1(jm+1),...,hm-1(jk))
となるσ1Giが存在する。σ=hmσ1Gをとれば、
σ·(i1,...,im-1,i,im+1,...,ik)=hm·(hm-1(j1),..., hm-1(jm-1),i,hm-1(jm+1),...,hm-1(jk))
=(j1,...,jm-1, jm,jm+1,...,jk)となる。

(ii) ある一つの1mkなるmについてjm=iで、i1,...,ikiを含まない場合:
(i)によりσ·(j1,...,jk)=(i1,...,ik)となるσGが存在するから、σ-1·(i1,...,ik)=(j1,...,jk)

(iii) (i1,...,ik), (j1,...,jk)の両方にiが含まれる場合:
iを含まない任意の順序付きk(r1,...,rk)について、
(i)によりσ1·(i1,...,ik)=(r1,...,rk)となるσ1Gが存在し、
(ii)によりσ2·(r1,...,rk)=(j1,...,jk)となるσ2Gが存在するから、
σ=σ2σ1Gをとればσ·(i1,...,ik)=(j1,...,jk)

(iv) (i1,...,ik), (j1,...,jk)の両方にiが含まれない場合:
iをひとつ含む任意の順序付きk(r1=i,...,rk)について、
(ii)によりσ1·(i1,...,ik)=(r1,...,rk)となるσ1Gが存在し、
(i)によりσ2·(r1,...,rk)=(j1,...,jk)となるσ2Gが存在するから、
σ=σ2σ1Gをとればσ·(i1,...,ik)=(j1,...,jk)

以上により、任意の2つの順序付きk(i1,...,ik), (j1,...,jk)について、
あるσGが存在してσ·(i1,...,ik)=(j1,...,jk)となるから、
{1,...,n}の相異なる元からなる順序付きk対全体の集合
Pk={(j1,...,jk)| j1,...,jk{1,...,n}}について、Gは可移に作用することになり、
よってGk重可移。

逆にGk重可移とする。{1,...,n}{i}の相異なる元からなる、
任意の2つの順序付き(k-1) (i1,...,ik-1), (j1,...,jk-1)に対し、
2つの順序付きk(i1,...,ik-1,i), (j1,...,jk-1,i)を考えれば、
あるσGが存在してσ·(i1,...,ik-1,i)=(j1,...,jk-1,i)である。
σ(i)=iなのでσGiだからGi{1,...,n}{i}(k-1)重可移。

したがってGk重可移であることと、
Gi{1,...,n}{i}(k-1)重可移であることは同値。

演習問題20
定義14.3.1により、G2重可移なら、
任意にi{1,...,n}をとってiの固定部分群をGiとすると、
すべてのj,k{1,...,n}{i}について、
σ(i)=iかつσ(j)=kとなるσGiが存在するから、Gi{1,...,n}{i}上可移。
そこでj{1,...,n}{i}を任意に一つ取れば、
先と同様にしてjの固定部分群Gj{1,...,n}{j}上可移となるから、
任意のk{1,...,n}{j}に対しτ(k)=i となるτGjが存在する。
するとτσ(j)=iとなるので、結局全てのj,k{1,...,n}について、
jkに写すGの元が存在するから、Gは可移。

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